エレキ倶楽部『さよらなら20世紀』 もののけ姫

      2008/12/12

前回からの続き。

アルバムの中で1、2を争う完成度。特に歌詞は素晴しいの一言である。雪男をめぐる少女の冒険譚。最後に彼女が見たものの正体とは?約6分30秒のこの特異な物語世界と、関西人最大の禁忌を犯してまで挑戦するその戦慄、衝撃の結末をじっくり堪能していただきたい。

「もののけ姫」
ウメガー:Voice
ピロシキ:Keyboads
ケンターラ:Bass
ノボルザーク:Guitar
シカソ:Programming

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出だしのイスラムっぽいコーラスとチェロのユニゾンは、The The "Mind Bomb"からのサンプリング。よく知らんが、アゼルバイジャンっぽいかなと思って。不穏な感じのリフはピロシキ氏によるもの。ドラムループは"Dave Ruffy's Ruff Cutz"。サックスのネタは忘れたが、カエルカフェのものであったように記憶している。

「もののけ姫」

アゼルバイジャンから 海を渡ってやって来た少女
傍らに30匹のカマキリを連れてる少女
凧糸にカマキリを巻きつけて歩いてる
中にはキツく巻きすぎて 首が取れてるものもいる

彼女の目的は 山に住んでるヨーゼフじいさんに会うこと
長年の再会を夢見る少女は 待ち合わせの樫の木に向かう

「よう来たなあ」 じいさんが彼女を迎える
「やあやあ、来たのかい。よし、とっておきのものを見せてやろう」 じいさん言う

少女は何かと思って楽しみにしている
すると一旦じいさんは家に帰りかけて やめて こちらに戻ってくる

「実はなあ、最近サスカッチ(※雪男)が出るのじゃ」
「私はサスカッチを獲るのじゃ」

共感した彼女は 一緒にサスカッチ獲りに行く

サスカッチを獲りに海に来た彼女は
サスカッチは山にいるものと知らなかったようだ

「あのう、ここらへんにサスカッチいませんか?」
漁師に聞いても分からない 当たり前

その時だった! 大波が彼女を襲った!

波にさらわれた彼女は 浜辺に打ち上げられた
その時手に持っていた なぜか知らないが
動物の毛のようなものが手に絡みついていた

「これだ、これだ。サスカッチ、サスカッチの毛だ!」
「じいさんに見せて喜ばしてあげよう!」

彼女は一目散にヨーゼフじいさんに会いに行った
そしたらじいさん出て来て驚いてこう言ったんだ

「それは他のものの毛じゃないの?」

ブルゴーニュ地方のピータン
ピータン、ブルゴーニュ地方のピータン
ブルゴーニュ地方のピー

カスピ海を越え、祖父のもとへやってきたアゼルバイジャンの少女。少女は祖父に雪男の話を聞き一緒に捕縛へ向うが、ここから物語の時間と空間が歪み、ある種の宗教伝説の影さえ帯びてくる。

そして、とってつけたような天災の次に訪れる物語の結末は、なんと「ダジャレ」。

東京ではギャクといえばダジャレ。江戸前落語もダジャレ落ちが多い。何がおもしろいんだあんなもん。マスコミも全国放送ではカッコつけて控えるが、関東ローカルなラジオ放送では一日中ダジャレばかりでびっくりする。本当に彼らはダジャレが好きなんです。ダジャレを言ったあとに、必ず愚にもつかないエクスキューズを入れるのがまた。

一方、大阪ではダジャレは最も下劣な笑いだとして強くタブー視されている。子供はダジャレを言いがちであるが、大阪では周りからそれはそれは厳しい叱責を受ける。そうして育った生粋の上方者である私も、当然ダジャレは大嫌いだ。最悪の話法である。しかもだ。この曲は最低な小噺の典型である「タイトルダジャレ落ち」である。

ウメガー氏もまた生粋の上方者であり、しかも氏はお笑いエリートの中のエリートである。その彼があえて最大の禁忌を犯して挑戦するダジャレ。おそらく氏にとってこの曲は人生最大の賭けであったであろう。この賭けに負けることはすなわち、これまでの地位も名声も富もすべてを失なうことはもちろん、住処までも失ない流浪の民として一生を終えるか、ダジャレ王国東京に住んで汚辱に塗れた一生を終えるかの究極の2択を意味する。

そして彼はものの見事にこの賭けに勝った。周到精緻な物語設定と、そのすべてを覆し天地創造をやり直すほどの脱力感を伴なった「ものの毛」というたった4文字の言葉の魔術によって、ダジャレをダンテ「神曲」レベルの芸術にまで昇華した。これぞ、「ダジャレ世界最高記録」として認定されるべき神が与えたもうた奇跡である。

と、疲れてるのでテキトーなことを書きましたが、次は個人的に最も好きな曲「天王寺のあめゆ」です。

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