イヴに親知らずを抜歯して本日抜糸

   

私の唯一の自慢は、「虫歯になったことがない」ということでありました。よって歯医者に行ったのは40年近い人生で2度ばかり。1度目は幼稚園の頃、すべり台のてっぺんから飛び降りてヒザで前歯を折った際、2度目は大学1年の頃、列車内でソフトバンクホークス斎藤投手の母校であるところの高校の野球部員数名にボコボコに殴られ前歯を折った際。

よって、左下の親知らずが猛烈に痛み出しても虫歯だとはとうてい思えず、誰かの呪いに違いないと思いつつ仕方なくクリスマスイヴの朝に歯医者に行ったところ間違いなく虫歯で、しかも親知らずは4本ともに虫歯であると衝撃的な宣告。

唯一であった自慢ネタが霧散したことに呆然自失とする中、「4本とも抜いちゃいましょう。まずはその左下から」と悪魔のように冷酷なことを宣う歯科医。承諾の意を伝えるやいなやレントゲン、麻酔。いざ手術という段になってなぜか歯科医が交代。中年男性から20台後半の女性へ。

この女性が大阪弁。私は生れも育ちも大阪であり、関東で生活する現在も大阪弁を喋っているが、なぜだか関東で聞く歯科医の大阪弁の怖さというものは尋常ではなかった。

私の親知らずはかなり大物らしく、手術は難航を極め、歯科医は何度か「あかんわ」とつぶやいた。怖い。チビりそうになる。実際ちょっとチビったかもしれん。手術中麻酔が切れ、この世のものとは思えないほどの痛みを3度ほど経験。脊髄から生命の危機を知らせる物質がピュンピュン出た。ペンチがギュっとなる度、手足が自分の意志と関係ない変な方向にキュウっとなった。薄目を開けると血塗れのペンチが台に置かれてたりして、悪夢そのものであった。

痛み止めを飲み続けるブルーな年末年始であったものの術後の経過は順調で、本日目出度く抜糸をしたのですが、「じゃ、あと3本ですね。次は左上の親知らずを抜歯しましょう。いついらっしゃいますか?」と聞かれ、数秒ほど固まった後「あ、あの未定でいうことですみせんが。いずれ電話しますので、本当に」。マジでこれを3回やられると確実に死ねるはず。

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